精神的に辛くて、すぐにでも会社をやめたいけど、次の仕事も決まってない。自己都合退職だと失業手当もらえるまで時間がかかるし……
あなたはこのように考えて、退職をふみきれずにいませんか?
たしかに自己都合退職で処理されると、失業手当の受給までの期間が経済的に不安で退職に躊躇してしまいますよね。
ですが勤務先での手続き上は自己都合退職でも、要件によって「やむを得ない理由での自己都合退職者」と認められれば、失業手当を給付制限なく受け取れます。
このような方の参考に
・精神的につらく、会社をすぐにやめたいけど転職先は決まっていない
・メンタルヘルス疾患があり、退職を考えている
・コールセンターを退職予定。給付制限なく失業手当を受給したい
どういった手続きをすれば給付制限なく失業手当を受け取れるのか、詳しく解説しますね。
退職したいと悩まれている方はぜひ参考にしてくださいね。
失業手当とは
まず、失業手当を受給するための基本的な条件を確認しましょう。
失業手当は正式には「基本手当」といい、雇用保険に加入していた労働者が求職中に経済的な心配なく就職活動をできるように与えられる手当です。
失業手当が受給される条件は以下の2つ。
- 就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること
- 退職日以前2年間に、雇用保険加入期間が通算して12か月以上あること(例外あり)
退職理由は大きくわけて会社都合と自己都合
退職する際は、退職理由は大きく分けると「会社都合」と「自己都合」です。
まず、それぞれに該当する状況をみてみましょう。
会社都合に該当する退職理由
会社都合退職に該当する事例は以下です。
いずれも労働者側の意思や都合ではなく、会社の経営状況などによる退職となります。
- 倒産、事業所の廃止
- 人員整理によるリストラ
- 会社側からの一方的な解雇
自己都合に該当する退職理由
つぎに、自己都合退職に該当する事例は以下です。
自分の意思や都合で退職を申し出る場合が該当します。
- 転職による退職
- 結婚、妊娠、出産、引っ越し、家族の都合による退職
- 病気による退職
自己都合はさらに2つの分類がある
一概に自己都合退職といっても、さまざまな状況があります。
たとえば、同じ自己都合退職でも「自分には合わないと思って辞めた」と「精神的に追い込まれ病気になり勤務できなくなって辞めた」ではまったく状況が違いますよね。
そこで、失業手当の受給手続き上では自己都合退職のなかでも退職理由により2つのパターンがあります。
正当な理由がない自己都合退職(一般受給離職者)
自分が理想とする待遇を求めて転職する等、自らの意思で退職する場合は「正当な理由がない自己都合退職」として、待機期間7日+2ヶ月の給付制限期間があります。
たとえば、以下のような個人的な事情での退職です。
- 転職
- 結婚を機に専業主婦になるため退職
- 特段の事情のない個人的な希望での退職
正当な理由がある自己都合退職(特定理由離職者)
もう一方、同じ自己都合退職でも「正当な理由があって自己都合退職を申し出る」こともありますよね。
たとえば、以下のような状況です。
- うつ病になり、勤務を続けるのが困難になり退職した
- 本当は辞めたくなかったけど、夫の転勤で通勤できなくなり退職した
- 親の介護のため辞めざるをえなかった
このような「正当な理由がある自己都合退職」は、申請し「特定理由離職者」と認められれば、給付制限なく失業手当を受け取ることが可能になります。
そんな制度があるんですね。知らなかったです。
そうなんです。詳しく説明しますね!
特定理由離職者とは?
自己都合退職でも「特定理由離職者」と認められれば、会社都合退職と同様に給付制限なく失業手当を受給できると分かりました。
では具体的にどんなケースが特定理由離職者として認められますか?
それでは特定理由離職者とはどのような場合が該当するのか、もう少し具体的にみていきましょう。
特定理由離職者として認められる退職事由例
ハローワークが定めた特定理由離職者として認められる退職事由例は以下になります。
特定理由離職者として認められる退職事由
- 体力の不足や心身の障害
- 妊娠、出産、育児等
- 父母の死亡や疾病など
- 配偶者や扶養すべき親族との別居生活の継続が困難となった
- 通勤不可能または困難
- 希望退職者の募集に応じた
例えば夫の転勤により妻が退職せざるを得なくなった場合、転勤辞令がわかる書類などの事由を証明する公的な証明を提出します。
証明をもってハローワークが承認すれば「正当な理由がある自己都合退職」となれます。
特定理由離職者になるための申請は、自己申告だけではダメなんですね。
体力の不足や心身の障害の具体例
このページをご覧になっているあなたは、退職事由例のなかでも「体力の不足や心身の障害」に該当するのではないでしょうか?
体力の不足や心身の障害とは、具体的には以下となります。
体力不足や心身の障害、疾病、視力・聴力・触覚の減退などの体調不良を理由に離職した場合。
心に関する具体的な病名だと適応障害、うつ病、自律神経失調症、双極性障害などが該当。
ちなみに、失業手当の受給条件の一つは働ける状態にあることなので、病気で現在も就労不能ならば受給資格はありません。
失業手当の申請は退職後1年まで可能なので、働ける状態になったら申請しましょう。
特定理由離職者のメリット
では特定理由離職者として認められた場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
失業手当の給付制限がなくなる以外にも、非常にありがたいメリットがありますので参考にしてください。
メリット1:雇用保険最低加入期間の優遇
失業手当を受給するのは、一定の雇用保険への加入期間が必要です。
雇用保険の最低加入期間の条件について、特定理由離職者は一般受給離職者よりも優遇されています。
区分 | 必要な雇用保険加入期間 |
一般受給離職者 (正当な理由のない自己都合退職者) | 離職以前2年間に 被保険者期間が12ヶ月以上 |
特定理由離職者 (正当な理由のある自己都合退職者) | 離職以前1年間に 被保険者期間が6ヶ月以上 |
雇用保険の加入期間が、通常の自己都合退職者より短くても失業手当がもらえるんですね。
メリット2:給付制限期間がない
特定理由離職者は、7日間の待機期間のあとの2ヶ月間の給付制限期間がありません。
正当が理由がない自己都合退職の場合、7日の待機期間の終了後さらに2ヶ月の「給付制限期間」が適用されます。
しかし、特定理由離職者は給付制限期間が適用されないので、7日の待機期間が終了した翌日から失業手当の受給が可能です。
退職理由にかかわらず、受給資格決定日からすべての離職者には「待機期間7日」が適用されます
メリット3:国民健康保険が軽減される
失業手当とは別の手続きですが、特定理由離職者として認められば国民健康保険料が軽減できます。
会社で社会保険に加入していた方は、退職し求職中は国民健康保険に加入しなければなりませんよね。
国民健康保険料は前年の所得をもとに保険料が計算されますが、
健康特定理由離職者に認定されると、前年の所得が30/100とみなされて保険料が決まります。
例
本来の保険料が年間約25万だとすると、年間約7.5万に軽減
軽減適用期間は離職日の翌日を含む月から翌年度3月分までの期間です。
例
令和4年3月31日離職の場合、令和4年4月から令和6年3月まで適用(令和4年度から令和5年度末まで)
国民健康保険料の軽減が適用されるかは、雇用保険受給資格者証の赤枠欄の「離職理由」のコードで該当するか判断します。
特定理由離職者の対象となる理由コードは、23、33、34となります。
特定理由離職者と認められると、ハローワークで通常の自己都合退職者のコード「40」から変更してもらえます。
国民健康保険料の負担はかなり大きいので、とてもありがたい制度ですね。
特定理由離職者と認定されたら自動的に国民健康保険料が軽減されるわけではありません。
申請が必要なので詳細はお住まいの区市役所に確認してください。
特定理由離職者として受給する方法
それでは、会社を自己都合退職した方は、どうやって「特定理由離職者」として認定されるのでしょうか。
手続きの流れを紹介しますね。
①退職日より前に医師の診断を受ける
疾病を原因として退職するのですから、退職日より前に病院を受診し、診断してもらう必要があります。
なお、この段階で病院に診断書等を発行してもらう必要はありません。
②退職し会社から離職票を受け取る
退職後、会社から約2週間程度で離職票が届きます。
もし離職票が届かない場合でも、退職から12日経過していれば雇用保険の仮手続きができます。
詳しくは管轄のハローワークに確認してみてください。
早く手続きすればするほど、受給開始日が早まります。離職票がなかなか届かない場合はハローワークに相談しましょう。
③ハローワークに行き、特定理由離職者の申請を相談
離職票が届いたら、なるべく早めに管轄のハローワークに行きましょう。
受給資格の決定の手続きを行い、疾病による「正当な理由がある自己都合退職」として特定理由離職者に該当する旨を相談しましょう。
すると「就労可能証明書」を渡され、病院で記入してもらうように言われます。
ハローワークにより「就労可否証明書」「病状証明書」など書式の名称が異なります
④病院にて就労可能証明書を記入してもらう
ハローワークからもらった就労可能証明書を、受診した病院で記入してもらいます。
就労可能証明書で医師に記入(証明)してもらう内容は以下になります。
・業務期間中に疾病と診断され、仕事の継続が困難になり退職した
・しかし現在は回復し就労は可能である
失業手当を受給するためのには「働こうとする積極的な意思があり、いつでも働ける能力がある」が条件です。
ですので、もし医師に「退職後の現在も就労は不可能」と判断される場合は、そもそも受給資格がないため特定理由離職者としての申請はできません。
現在の症状によっては、医師に記入を断られる可能性もあるかもしれないので、よく確認してくださいね。
記入してもらうのはハローワークの書式です。
病院が発行する、いわゆる「診断書」は必要ありません
⑤雇用保険説明会に出席し証明書を提出する
次に、医師に記入してもらった就労可能証明書を提出し、ハローワークの雇用保険説明会に出席します。
特定理由離職者として認定されたら「雇用保険受給資格者証」の離職理由コードを「33」に変更してもらえます。
これにより2ヶ月の給付制限はなくなり、7日間の待機期間後すぐに失業手当の給付がはじまりますよ!
すぐに失業手当がもらえるのは助かります!
特定理由離職者のよくある質問
あとから会社にバレる?
特定理由離職者と認められとしても、ハローワークから会社にわざわざその旨を通知しません。
身体の疾患で認めらるか
心の病ではなく、身体の病気でも申請は可能です。
しかし「病気になり会社を休職した。いまは完治して働いているけど病気をきっかけに人生を考え直し、退職する」。
このような直接は病気と退職が関係ない状況だと医師は証明書に「退職時には就労が困難であった」と記入することは難しいでしょう。
パワハラが原因で退職する場合
ここでは、パワハラにて医師にメンタルヘルス疾患の判断をされた場合を前提として説明します
パワハラは「退職を余儀なくされるケース」として、本来はそもそも「会社都合での退職」となります。
会社側が会社都合退職として処理をしてくれれば、特定理由離職者になるための手続きも不要で、給付制限なく失業手当が給付されます。
しかし、なかなか会社に言い出しにくい状況もあるでしょう。
以下のメリットデメリットを勘案して、あくまで会社都合を申し出るか、自己都合退職するかを判断しましょう。
会社都合退職のメリット
・特定理由離職者になるための手続きは不要で、給付制限なく失業手当を受給できる
・失業手当の給付日数が自己都合退職にくらべ長い
会社都合退職のデメリット
・パワハラを原因として退職する旨を会社に申し出る必要がある
・パワハラを原因とする退職と会社が認めてくれない可能性がある
・次の就職先での退職理由の説明に苦慮する可能性がある
自己都合で退職しても、パワハラが原因であるとハローワークに相談すれば、退職理由を会社都合に変更できる可能性があります。
監査機関から会社への事実調査などが行われることになり、パワハラが確認されれば会社都合の退職に変更されます。
以下の記事ではどのような行為がパワハラに該当するのか紹介していますので参考にしてくださいね。
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参考【今すぐ相談】コールセンターにおけるパワハラの具体例と対処法
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さいごに
疾患をわずらい退職する場合、自己都合退職でも給付制限なく失業手当が受給できる可能性があるとわかりました。 続きを見る
もしあなたが病気を抱えながらも退職をふみだせないのであれば、ぜひこの制度を活用してみてください。
心を病んでしまうと、取り戻すにはかなりの時間を費やします。
そうなる前に、一刻も早く決断しましょう。
自分でどうしても退職を言い出せないのであれば、退職代行サービスも検討してみてくださいね。
あなたの今後の人生が素晴らしいものになりますように。
参考【おすすめ5選】安全な退職代行サービスを利用していますぐ退職
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